被災地での55の挑戦 ―企業による復興事業事例集―
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た。地域での垂直分業により水産業のapple化を目指す山徳平塚水産、地元木材の普及を目指して倉庫業者や工務店との連携を試みるマルヒ製材などがその例である。 昨年の調査では、生産体制を早期に復旧させようと内陸企業の協力を得て役割を分担し、OEM生産やファブレス化を図った事例が多くみられた。今回の調査では、そうした取組をきっかけに地域ぐるみの取組へと発展させ、将来的な業界再編の動きにまでつなげようとしている点は大いに注目すべきことである。 このほかにも、新商品開発や販路開拓といった攻めの姿勢だけでなく、“徹底した業務の効率化”で足元の経営を見直した事例も多い。 漁獲時期が決まっていて売上のボラティリテイが高い水産加工業の業界特性をはねのけようと、魚種の拡充や単純加工の業務受注により設備の回転率をアップさせた山岸冷蔵、トヨタ生産方式の導入によって徹底した業務の平準化を試みた五戸商店などがその例である。また、製造業の分野でも、IT化で短納期化や大量受注を可能にした十一屋ボルトも同様の例である。このように、地道な業務改善も併せて取り組むことが産業の復興にとっては大切な要素である。 '6( 政策上のインプリケーション 被災地企業の多くは、グループ補助金等の活用によって生産の復旧を果たし、震災によって喪失した販路の開拓に鋭意取り組んでいる。被災地企業にとって喫緊の課題である販路開拓や、従来型の受注生産から消費者への直接販売への転換など、震災を契機とした事業環境の変化への対応を成功させるには、国等によるより踏み込んだソフト的支援が必要となってくる。 例えば、本事例集では、国や県などの販路開拓支援や専門家派遣制度などを上手く活用した事例があったが、今後はこういった支援をさらに深掘りし、具体的な販売先の紹介、国や自治体のみならず民間の助成などを引き出す具体的な支援ができるビジネスの専門家等を、ある程度継続的に派遣する施策等が必要と考えられる。 今後、復興庁として、本事例集で共通してみられた課題解決の取組や方向性をもとに、「新しい東北の創造」に向け、産業の復興にとって効果的な具体的な施策を検討し、本年度実施する復興庁の各種施策へ反映して参ります。 平成26年3月 復興庁 企業連携推進室

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