被災地での55の挑戦 ―企業による復興事業事例集―
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51 事例2-6 女川カレープロジェクト-女川をカレーのまちに~ 宮城県女川町 1.新商品開発によって経済的かつ継続的な支援を実施 2.「人」「ニーズ」「地域」「素材」の融合による商品化 アナン株式会社 1979年設立、従業員数4人'2014年2月末現在( 事例の概要 '1(プロフィール'概要( 鎌倉市のアナン(株)はインド食材販売会社として、香辛料の輸入販売を手掛ける会社である。当社で香辛料の輸入を担当するメタ・バラッツ氏は、震災直後にボランティアを手掛ける「ちきゅうの子22」とともに、津波被害が甚大であった女川町に入り避難所の方々に炊出し用のカレーを提供した。2011年4月から約半年間、月平均3~4回の炊出しを継続。震災直後の避難所は寒く、子供から高齢者まで幅広い世代の人達がいた。そこで、バラッツ氏は、寒さの中でも体が温まるように、血流を良くするスパイスを配合し、胃腸に負担がかからず、かつ子供も高齢者も食べられるように、消化のいい豆を入れ、刺激が強くないやさしいカレーを考案した。避難者のために開発したカレーは「体が温まり、おいしい」と評判を呼んだ。 '2(バックグランド'背景( 震災後、被災地には多くの個人ボランティアが支援に入った。だが、被害状況が甚大であればあるほど、個人でやれることには限りがある。バラッツ氏も被災地支援に真剣に取り組めば取組むほど、無力さを感じることも尐なくなかった。「一回に一人一食しか提供できず、どうしてもその場限りの支援になりがち。もっと経済的かつ継続的に支援できないものかと自らの不甲斐なさを感じた」と当時を振り返る。 葛藤を続ける中、ふと頭をよぎったのが炊出し用のカレーであった。炊出し用のカレーを女川町の人達で製造・販売すれば、雇用の創出や新しい観光資源になり、地域経済の活性化にもつながるのではないか。ただ、女川町に縁もゆかりもない「よそ者」に頼るべき人的ネットワークは尐なく、地元の人に受け入れられる保証はどこにもなかった。しかし、その復興への想いは、NPO、行政、企業等が集まる女川町復興連絡協議会で地元商工会の青山貴博氏(経営指導員副参事)と出会い、賛同を得たことで具現化されていく。青山氏は、民間の立場から復興のグランドデザインを行政に提案し、女川町の復興と再生に取り組んでいる人物であった。 雇用の創出商品化経済的な支援カレーの炊出し「女川カレー」の地域資源化誰もがアレンジできる点をウリにする新会社の設立展望本格実施地元飲食店、観光協会への働きかけ継続的な支援月平均3~4回の炊き出しを実施準備ネットワーク不足人材確保場所の確保構想・計画3.11催事、イベントへの出店課題課題への対応販路開拓活動をサポート復興連絡協議会に参加商工会のサポート

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