被災地での55の挑戦 ―企業による復興事業事例集―
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ニーズをもとにメンテナンスフリーの精米機を開発した山本電気などがその例である。いずれも大手が参入しにくいニッチな市場を開拓している点も大きな特徴である。 “大胆な発想の転換” 新商品を開発する際、その着眼点はどうしても業界内の常識にとらわれがちである。こうした常識を覆す大胆な発想で新たな商品やサービスの開発に成功した事例も多い。 漁船を広告媒体に活用したADBOAT JAPAN、ものづくりからスイーツや機能性野菜の生産に進出した向山製作所や会津富士加工などがその好例である。いずれも業界を飛び越えた大胆な発想で新たな商品やサービスを生み出している点が特筆される。 “震災を気づきとした着想” 震災は被災地の企業に大きなハンデとなった。しかしながら、他方でビジネス上の気づきを与えているケースもある。 震災の経験をもとに、悪路でも走行できる電気三輪車や停電時にガスでも発電できるハイブリッド発電機を開発した山岸産業、スーパーやホームセンターを単なる小売店舗ではなく災害拠点に位置付けたウジエスーパーやダイユーエイト、震災をツーリズムへ発展させた三陸鉄道などがその例である。こういった取組は、まさに震災というピンチをチャンスに変えた好例といえる。 “足許の強みの再発見” 被災地の企業は地元では気づかない有力な地域資源を持っているケースが多い。ところが、全国的にみて自社の持つ強みがどれくらいの競争力や価値を持っているか客観的に把握することは存外難しい。そのような状況にあって、改めて自社の持つ地域資源の価値を見つめ直すことで新しい商品やサービスを開発した事例もみられた。 世界的にも有力な地域資源である琥珀を商品化した久慈琥珀、地域に密着したバス会社にしか分からない路線展開で成功した岩手県北バス、三陸のひものの良さを引き出すことにこだわりハーブ干物を生み出した三陸天然市場などがその例である。 このほかにも、震災を契機に“大手流通業者からの提案を受けて新商品を開発”した事例や“新たな設備導入によって品質や付加価値の向上”を実現した事例も数多くみられた。 手間を掛けず直ぐに食べられる魚~ファストフィッシュ商品を考案した久慈漁協、スーパー向けのイカめしを開発したナカショク、CAS(セル・アライブ・システム)やプロトン凍結機といった最新鋭設備を導入することで品質を向上させた三陸とれたて市場やマルキンなどがその例である。 '2( ブランドの構築 “巧みなプロモーション展開” ブランド化については、商品やサービスそのものの良さで勝負するだけではなく、積極的なプロモーション展開によって訴求力を高めた事例も多い。 全国的に有名なアニメキャラクターを採用した久慈漁協、有名シェフや料理人に商品プロデュースを依頼したマルキンや山本電気、国際的な展示会への出品で世界的な評価を得て販路開拓の足掛かりを築いた向山製作所などがその例である。

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