被災地での55の挑戦 ―企業による復興事業事例集―
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25 事例3-7 世界最高峰の展示会で評価を得て、風評被害に立ち向かう! 福島県大玉村 1.新規事業参入に際しての緻密な分析と戦略 2.原材料切り替えや外部評価の獲得など、自社商品のブランド価値の維持・向上 株式会社向山製作所 1990年設立、従業員数83人'2013年3月末現在( 事例の概要 '1(プロフィール'概要( 大玉村の㈱向山製作所は、織田金也社長が電子部品製造のため創業した企業である。大手メーカーの下請として有機ELパネルをはじめ各種電子部品を手掛ける一方、2008年にスイーツの製造・販売に参入。歯に付かないすっきりした食感と素材の深い味わいが特徴の生キャラメルをはじめ、当社の商品は「電子部品メーカーがつくるスイーツ」として顧客から高い支持を受けている。 '2(バックグランド'背景( 創業以来、本業の電子部品は技術革新あるいは景気変動による受注増減の波を大きく受け、その度に当社は経営の浮き沈みを幾度も経験した。織田社長は常々、「下請の仕事だけでは希望がない。下請体質から脱却し、誇りを持てる自社オリジナル商品を世に出したい」という思いを強く抱いていた。顧客の支持が高い自社商品によって経営を安定できれば、従業員の雇用を維持できる。かつて従業員の雇用を守るために調理師免許を取得した織田社長が着目したのは食品分野、中でもスイーツであった。出張で東京を訪れた際、百貨店や駅の商業施設に出店するスイーツ店の多さと、商品の地方産の多さに注目した。「スイーツなら地方にいても勝負できる」と織田社長は考えた。生キャラメルを選んだ理由は、カラメルソースにすることで他の菓子へ活用しやすい点、設備は鍋とコンロで十分な点、作製に人手と手間がかかり競争相手が尐ない点であった。加えて電子部品もスイーツも同じ「ものづくり」であり、当社の持つ生産管理等のノウハウ、例えば精密部品を扱う細かな作業等がスイーツづくりにも活かせる点も大きな理由のひとつであった。 2008年、当社で味覚センサー開発に関与していた社員(栄養士)を中心に、生キャラメルの開発に取り組んだ。開発のコンセプトとして①福島県産の素材を使うこと、②歯に付かず口の中ですっと溶けるという今までにない食感を出すことを重視した。織田社長は開発担当の社員に1日1つの試作品を作るよう指示を出し、連日開発に取電子部品の受注変動スイーツ事業への新規参入地域活性化世界最大級の見本市に出展課題課題への対応各地から生クリーム調達生クリームを調合し、味を再現スイーツの本場パリでの高い評価福島県産生クリームの途絶ファクトリーショップにより地域へ誘客風評被害他社との差別化主力商品を生キャラメルに福島県産材料へのこだわり展望本格実施準備構想・計画3.11独自の食感の追求当社の生キャラメル

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