被災地での55の挑戦 ―企業による復興事業事例集―
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19 事例3-1 地域の水産業復興に向けて企業ノウハウを共有化 福島県相馬市 1.漁協の働きかけによって、地域のリーディング企業が技術・ノウハウを同業他社に開示 2.同業者間で技術・ノウハウを共通化し、地域全体で水産物の高い品質を維持 相馬双葉漁業協同組合 2003年創立、正組合員数1,385名'2013年3月末現在( 事例の概要 '1(プロフィール'概要( 相馬市の相馬双葉漁業協同組合は、2003年10月に7つの漁業協同組合の合併により設立された漁業協同組合である。当漁協は、かつて水揚高約70億円と福島県で最大規模を誇っていたが、震災及び原発事故の影響により、一部の魚種を対象とする試験操業を除き、2014年3月現在、操業を自粙している状況にある。 '2(バックグランド'背景( 震災の翌年となる2012年6月、放射能のモニタリング検査結果を踏まえ、タコ2種(ミズダコ、ヤナギダコ)及び貝1種(シライトマキバイ)について、試験操業の底びき網漁が再開された。当漁協の遠藤和則本所部長は、「試験操業ではあったが、再開を待ち望んでいた。特に底びき網船は従業員を多く抱えていたため、漁をやらなくてはという思いが強かった」と語る。漁獲可能となったタコについては、ボイル加工の上冷凍により保存が可能であること、また、小型船による沖合のタコカゴ漁でも漁獲可能であることから、当漁協では当面、漁協全体として漁獲量がまとまるタコをメインとして試験操業を行うこととなった。 試験操業として漁は再開されたものの、水揚げされた魚介を買い受ける地元の仲買人企業は津波によってほぼ全社が被災し、復旧が進んでいない状況であった。このため、仲買人企業25社で構成される相馬原釜魚市場買受人協同組合が組合全体として直接タコを買い受け、組合構成企業のうち震災前からタコのボイル加工を扱っていた2社が加工を交代で担当し、出荷することとした。震災前の魚介の流通は、仲買人企業が水揚げされた魚介をセリにて仕入れ、自社工場で加工した上で出荷するというものであり、仲買人企業によって得意とする魚介が異なる。ボイル加工を担当した2社のうち、㈱マル六佐藤水産は、タコのボイル加工を得意としており、茹で上がりの色や味加減という点において地域で最も優れた技術やノウハウを持っていた。震災前は同社がボイル加工を手掛けたタコの評判は、東京の築地市場で非常に高かったという。 タコの水揚量が2012年9月から12月にかけて最盛期を迎えて増えていく中、1社でボイル加工できる能力に試験操業開始課題課題への対応タコのボイル加工リーディング企業が技術開示・指導ボイル加工のばらつきボイル加工先の不足復旧した4社を追加し6社体制に水揚げを買受人組合が買受け従前から手掛ける2社で対応タコ漁をメイン地域全体で技術・ノウハウを共通化展望本格実施準備構想・計画3.11

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