被災地での55の挑戦 ―企業による復興事業事例集―
138/146

125 事例3-16 グローバル展開のマザー工場としての役割 福島県いわき市 1.震度6弱の直下型地震に耐えたプラント設計と早期復旧 2.供給制限で気付かされた自社製品の「商品力」 3.いわきをグローバル展開の拠点とする企業戦略 株式会社クレハ 1944年設立、従業員数4,046人'連結、2013年3月末現在( 事例の概要 '1(プロフィール'概要( いわき市にあるいわき事業所は、クレハ製品の多くを製造している国内最大の拠点である。111万5千m2の敶地には、機能樹脂、炭素製品、医薬品、食品包装材用樹脂プラントなどが並び、スペシャリティ製品を世界に供給するマザー工場の役割を果たしている。 2011年3月の震災でプラントは全面停止した。復旧作業により一部のプラントが稼働するも、4月11日、12日の二度にわたる直下型余震(震度6弱)に見舞われ、プラントが再び全面停止することになった。その後、5月上旪にはプラントの稼働が一部再開、7月下旪には当初の想定よりも早く全面復旧を果たした。現在、いわき事業所内に食品包装用塩化ビニリデン樹脂の新プラントを建設中で、2014年度末の操業開始を予定している。 '2(バックグランド'背景( 福島県内で直下型地震によって被害を受けた化学プラントが存在したことはあまり広く知られていない。最大加速度500ガルを超える地震動に見舞われた化学プラントは世界的にみても事例がなく、震災後、安全工学会地震被害調査委員会の視察を受け、後に他社の参考例になるとして報告書が公表された。 3月11日の本震でプラントが全面停止していたため、その後発生した直下型地震に遭遇しても被害は最小限にとどめられたということもあったが、当社では、緊急時の対応手順を策定していたこと、防災訓練を毎年実施していたこと、震災前に設備や施設に対して十分な耐震対策を施していたことが功を奏して、人的な被害は軽傷者2名に留まり、周辺環境への危険物の漏えいなども生じなかった。しかしながら、各種配管の損傷や、地盤沈下・液防災・安全への取組発災直後の対応プラント停止・復旧作業全面復旧までの取組事業所長に全権委任新プラント建設研究所拡充耐震対策の実施ふくしま産業復興企業立地補助金の活用自社製品の「商品力」の再発見工場としての競争力強化技術力向上の中核拠点課題課題への対応防災訓練の実施ほぼ不休の復旧作業死傷者ゼロ、周辺環境への影響ゼロ人財の育成拠点グローバル拠点としてのいわき展望本格実施準備構想・計画3.114.114.12研究開発部門との連携いわき事業所全景

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です