被災地での55の挑戦 ―企業による復興事業事例集―
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118 げるための工夫は次のようなものである。作業量はスピード×作業時間で決まる。ただし、作業時間の8時間を変えないのであれば、時間内の効率をあげるしかない。時間内の効率を上げるためには、①スピードをあげる、②ムダをなくす方法がある。男性経営者は①を好むが、「早く縫え」ということになると女性スタッフにプレッシャーになってしまう。そこで、女性中心の当社は、①ではなく②の徹底した「ムダをなくす」取組を行った。このことで、スタッフの取組意欲がわき、会社の「前に進もうとする力」が高まってきている。科学的なマネジメントとしては、独自の目標管理ツールを開発しマネジメントしている。 当社では、まず、①「売れる方法を決める」、②まずは自分でやらせてみる、③効果を測定するといった形で、「科学的に売る」ことを考えている。このように、当社は生き残るため、「管理の形」、「仕組み」をつくることにこだわっている。 '3(チャレンジ'挑戦( 当社の基本は、小型店舗を集中的に展開し、店舗で簡単な修理加工を行い、複雑な加工は仙台工場で集中して行うというものである。ただし、地方では人口減尐で需要が伸びないため、10年前に東京進出し、東北での基本サービスを再現し、店舗拡大に成功した。「売るを科学する」ことにより、独自の目標管理と経営管理の仕組みづくりが東京での成功につながった。 また、新規店舗が立ち上がるまでには、3~4年かかるため、どうしても店舗間の稼働率に差がでてしまう。こういった状況に対応するべく、忙しい店舗の加工仕事を新規店舗にまわす「店舗間移動」を取り入れている。各店舗の仕事量、各店舗スタッフの技量について、本部で把握しているため、仙台で集中管理することで、繁忙店の仕事を工場増設なしでこなし、新規店舗の仕事量を増やすことが可能になった。数年後は新規店舗も軌道にのり、常に新規店舗を開設するため、加工仕事をする部門も存在するという好循環を生んでいる。 当社の課題は、労働力不足対応と人材確保である。スキルのあるベテラン人材の採用は難しいため、定着率の高い新卒社員の自社養成を行っている。研修は、本社での集中研修を行っていたが、尐人数店舗で研修のために人材を割くのは困難なため、研修スタッフが各店舗に出向く形の研修や、スタッフがビデオによってスキルを自習する研修も検討している。このようにして、業務のルーチンができるよう新人を育てている。当社の雇用政策は、 ① 新卒採用のパイプ拡大(専門学校等)、②障がい者支援、③中国人就学生、④主婦層の戦力化である。①は 専門学校等で当社がスキルを教えているよしみで卒業生を送ってもらうもの、②は障がい者に当社を見学してもらうことで興味を持ってもらい、当社業務を行ってもらおうというもの、③は慢性的な労働力不足の中で活用を考えているもの、④は本社に託児施設を設置して子育てしながら働いてもらうものであり、多様な働き方を受け入れるダイバーシティの取り組みにより人材確保と業務への対応を図ろうと考えている。 '4(エッセンス'大切なこと( 二子玉川高島屋店の写真 当社の取り組みは、競争の激しい消費者向けビジネスにおいて、①「売る」を科学する'独自の目標管理と経営管理の仕組みづくり(、②人材確保・育成の新たな取り組み'独自の研修とダイバーシティの取り組み(に特徴がある。被災地でも課題となっている人口減尐下での需要不足、厳しい競争と企業の生き残り・成長について、徹底した経営管理と東京進出による市場拡大で対応し、深刻な労働力不足についても、多様な働き方を認める取り組みにより対応しようと取り組んでいる点が特筆される。

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