被災地での55の挑戦 ―企業による復興事業事例集―
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109 事例1-12 経営の合理化と商品高付加価値化へのシフト 岩手県釜石市 1.TPS'トヨタ生産方式(の「平準化」の考えを業務プロセスに導入し経営を合理化 2.自社商品の高付加価値化による、一般消費者向け等新たな販路の開拓 株式会社井戸商店 1968年設立、従業員数33人'2013年3月末現在( 事例の概要 '1(プロフィール'概要( 釜石市の㈱五戸商店は、イカに特化し業務用冷凍食材製造を行う水産加工業者である。問屋や商社を通じ、スーパー、コンビニ、レストラン、学校向け等に、イカフライ用のイカリングをはじめとするカット加工品を供給している。当社の大橋武一社長は、自社の経営にTPS(Toyota Production System:トヨタ生産方式)を導入し、経営の合理化を促進している。 '2(バックグランド'背景( 当社がTPSを導入したのは2006年頃である。TPSを先んじて導入していた取引先の問屋の社長から、「自社の改善がうまくいったので御社でも導入してみたらどうか?」と勧められたのが契機であった。当初、大橋社長はTPSとはどのようなものかをよく理解していなかったが、岩手県内で開催されたTPSをテーマとする講習会に参加してみたところ、講師の「TPSを導入することにより、今の人数で生産性は3倍になる」との言葉に強く惹かれた。 大橋社長は(公財)いわて産業振興センター等が開催するTPSの研修に参加して知識の習得に努めたり、研修の一環で訪れた関東自動車工業(現在のトヨタ自動車東日本㈱)で実際の製造現場を見たりと、情報収集に努めた。さらには研修への参加を通じ、関東自動車工業で社長を務めた内川うちかわ晋すすむ氏(トヨタ自動車東日本㈱名誉顧問)と繋がりができた。内川氏はTPSを確立・体系化した故大野耐おおのたい一いち氏(トヨタ自動車㈱元副社長)から直接教えを受けた人物である。大橋社長は内川氏から直接指導を受け、TPSへの理解をより一層深めた。 大橋社長は、TPSの考え方と当社の業務プロセスを照らし合わせ、TPSの要素の一つ「平準化」が、当社の業務プロセスにも導入可能であり効果も高いのではと考えた。平準化とは、需要や業務負荷が特定の時期等に偏らないよう均等に配分することであり、その考え方を応用し、原材料調達、生産、販売の改善を試みた。具体的には、原材料調達では、仕入先の協力を得て仕入のサイクルを見直し、資金繰りの平準化を図る。生産では、販売の状コスト削減等経営合理化TPSの導入商品の高付加価値化協力工場への生産委託課題課題への対応一般消費者向け新商品開発新規事業のためのスペース新設工場再建売上・生産量減尐TPS手法の活用事業継続困難新規採用人材の育成社内へのTPS浸透社長を中心に社内の理解促進従業員に導入成果を示す展望本格実施準備構想・計画3.11当社の新工場

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