被災地での55の挑戦 ―企業による復興事業事例集―
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105 事例2-13 現場主義を重視する経営スタイル 宮城県仙台市 1.社員の主体性を引き出す常日頃のコミュニケーション 2.社員自らの判断で復旧と新商品開発に取り組む 弘進ゴム株式会社 1935年設立、従業員数316人'2013年12月末現在( 事例の概要 '1(プロフィール'概要( 仙台市の弘進ゴム㈱は、国内トップシェアを誇るゴム長靴をはじめとしたシューズウェア部門と、産業用ホース等の工業用品部門、遮水シートや各種フィルムを手掛ける産業資材部門を3つの柱として、全国的に事業展開しているメーカーである。当社は、創業以来、時代や市場の変化に敏感に対応しながら、「常にお客様の立場にたった製品づくり」にチャレンジしている。2007年には経済産業省の「元気なモノ作り中小企業300社」にも認定される等、機能性・耐久性を追求する技術力は高い評価を受ける会社である。 '2(バックグランド'背景( 震災では、本社も亘理工場も物的・人的被害はほとんどなかったが、電気や水道などの寸断で2週間ほど操業停止に陥った。また、効率化の観点から仙台に集約していた物流網は約1ヶ月間に亘り寸断され、沿岸のコンビナート炋上によって薬品・薬剤の供給もストップし深刻な材料不足に陥った。加えて、多賀城市にあった関連会社の再生タイヤの工場は11棟あった建物が2棟を残して損壊し、商品のタイヤの大半が流出。震災は当社に複合的な危機を同時発生的にもたらした。 当社は、この複合的な危機に対して現場社員の自主的な判断によって復旧を進めた。当社の西五英正社長は、「単一の危機には、トップに情報を迅速に集約して決断を素早く行うことが必要だが、今回の震災のような複合的な危機が同時に発生する場合は限界がある。全ての情報を集約することは難くなり、結果としてトップが判断を誤るリスクは大きくなる。即断即決が求められる有事には現場に判断を委ねる覚悟も必要だ」。その言葉を象徴するのが再生タイヤ工場の復旧作業である。西五社長は復旧・復興に当たって特別な指示はしなかった。現場責任者は各自の判断で流出したタイヤ、機械、金庫を回収し、がれきの撤去作業を進め、震災後3ヶ月後に全面復旧させた。がれき処理を待つ企業も多い中で驚異的なスピードでの復旧であった。「リーマンショック以降、一人ひとりの能力を最大限引き出すことを考え、自ら考えて行動できる人材の育成を心掛けてきた。震災ではそれぞれの社員がそれぞれの立場で何をなすべきか分かっていた」と、西五社長は当時を振り返る。 新商品の企画課題課題への対応製品化'量産化(早期の事業復旧御用聞き型企業訪問事業静摩擦の向上堀切川教授との共同研究生産工程の確立食品メーカーへの拡販現場の判断を重視いち早くがれき処理に着手新技術の開発金型メーカーとの協働販路開拓「滑りにくい靴」を企画展望本格実施準備構想・計画3.11

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